fly with the wind


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osamu 's RC flight

RCグライダー入門


・概 要

 このページでは、RCグライダー(ラジコングライダー)とは何か、どのような飛行方法があるのかを説明します。RCグライダーにはさまざまなカテゴリーがありますが、主に平地でのサーマル・ソアリング、電動RCグライダーによるサーマル・ソアリングに重点を置いています。またRCグライダーの操縦をマスターするためのヒントも述べています。


・目 次

1.RCグライダーとは
2.サーマル・ソアリングとスロープ・ソアリング
3.サーマル・ソアリングの高度獲得方法
4.RCグライダーを始める
5.電動RCグライダー
6.RC装置

7.ヒント&ティップス

7.1. 対面操作と当て舵
7.2. エレベーター操作
7.3. 作って飛ばして壊して直してまた飛ばす


1.RCグライダーとは

 RCグライダー(RC sailplane[英]、RC Segler[独])とは、RC=Radio Controlラジオコントロール(ラジコン)で操作される無人の小型航空機で、基本的には無動力で滑空飛行を行います(RCをRemote Control=リモコンの略とする場合もあります)。エンジンやモーターなどの動力を持つタイプ(モーターグライダー)もありますが、これらの動力は高度獲得のために用いられ、高度獲得後は動力を停止して滑空飛行を主に行うため、常時、動力飛行を行う航空機(一般に飛行機と呼びます)とは区別されます。

 機体はおよそ以下の3タイプに分類されます。

1.1. 入門機・スポーツ機

 入門用、あるいは気軽に飛ばすには安定性がよく、飛行速度もあまり速くない機体が向いています。また小型軽量の機体ではエルロンを装備せず、主翼上半角を大きくしてラダーとエレベーターだけで操縦するものがあります。

1.2. 競技機

 国際模型航空連盟(CIAM)のRCグライダー競技規定に特化された高性能機で、以下のようなカテゴリーがあります。

F3B
 速度、距離、滞空の3タスクを同一の機体で行います。現在は翼幅3〜3.3mの機体を電動ウインチで曳航します。速度競技では150mのコースを2往復する飛行時間を競います。最近は13秒を切っていますので、平均速度は160km/h以上です。

F3F
 スロープで速度を競います。現在は翼幅2.8〜3mの機体を飛行させます。100mのコースを5往復する飛行時間を競います。最近の記録は30秒台ですので、平均速度は120km/h以上となります。

F3J
 人力で曳航し、滞空時間を競います。現在は翼幅3.2〜3.5mの機体を150mの曳航索で2人で曳航します。

F3K
 翼幅1.5m以内の機体を手投げして、主に滞空時間を競います。

F5B
 電動グライダー。速度と滞空時間を競います。ニッカド10セルと27セルのカテゴリーがあります。翼幅1.5〜2mの機体を使用しますが、RCグライダーの中でもっとも高速で200km/h以上で飛行します。

F5J

 滞空時間を競う電動グライダーのカテゴリーです。

 これらの競技機は設計理論の面では最新の航空力学の成果を取り入れ、また機体構造の面ではカーボン複合材(アラミド/カーボン・エポキシなど)などの軽量・高強度な素材を用いて製作されます。

 操縦系統としては、最近のF3B、F3J、F3F、F5J機はほとんどがエルロン、ラダー、エレベーター、フラップを装備しています。F5B機は軽量化のためにエルロン、エレベーターの機体が多いようです。

・F3Fスロープ競技


1.3.スケール機

 実物のグライダーを縮小したもの。RCグライダーは小型になると空気力学的な性能が大幅に低下するため、飛行性能は競技機には及びませんが、外見は優雅で個性的なため愛好者が多いジャンルです。目の前を飛行させて機体をよく見ることができるスロープ飛行に向いています。レシプロ機やジェット機の模型をグライダーとして、つまり無動力でスロープで飛ばすPSS(パワー・スロープ・スケール Power Slope Scale)というジャンルもあります。

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2.サーマル・ソアリングとスロープ・ソアリング

 RCグライダーには大きく2つの飛行方法があります。

2.1. サーマル・ソアリング

 サーマルthermalとは「熱上昇風」のことで、平坦地に発生する上昇風です(ドイツ語ではThermik=テルミーク)。一般に地面が太陽光で暖められると暖気が発生し、それがやがて気泡状/渦状になって上昇し始めます。しばしば田畑でトンビやカラスが羽ばたかずに旋回しているのを見かけることがありますが、これもサーマルを利用しているのです。

 地上付近では直径数メートルですが、上空500〜600mになると人間の乗るグライダーを上昇させるほど強力で大きなサーマルも発生します。以前に河川敷で数百羽のカモメがサーマルに乗って上昇していくのを見たことがありますが、このときは弱い竜巻のような渦の形をしていました。

 サーマルは目には見えないので、RCグライダーをサーマルに乗せるにはある程度、経験が必要です。具体的には、飛行中のグライダーの微妙な姿勢変化を観察してサーマルに接触したかどうかを判断します。

 滑空中の機体がサーマルに接触すると、わずかに左右に揺れたり、舵を打たないのに旋回したりします。このような動きをしたときはすぐにサーマルが想定される方向へ旋回させてサーマルに入るようにします。

 RCグライダーが乗るサーマルはそれほど大きくはないので、なるべく旋回半径を小さくしないとサーマルから外れてしまいます。しかし急旋回しますと高度をロスしてしまいます。旋回中はエレベーター・アップを引いて低速で旋回させますが、アップを引きすぎると失速して高度をロスします。このあたりがサーマル・ソアリングのむずかしさでもあり、おもしろさでもあります。

 サーマルに上手く乗せれば、無動力のRCグライダーがどんどん上昇していき、15分、30分、1時間と飛行させることができます。

 ただし、強力なサーマルに遭遇すると機体が急速に上昇して見る見るうちに小さくなり、見失う危険がありますので注意が必要です。

2.2. スロープ・ソアリング

 丘陵地帯、山岳地帯、海岸の傾斜地や断崖あるいは河川敷の土手などの斜面=スロープに吹き上がる斜面上昇風を利用して飛行させる方法です。一定以上の風があれば、いつまでも目の前を飛行させることができます。

 またスロープにもサーマルが流れてくることがありますので、まずスロープから機体を発進させ、流れてくるサーマルに乗せる、遠くのサーマルに乗せる、という飛行方法もドイツなどでは行われています。このため、遠くに出しても視認できるようにドイツでは翼幅4〜7メートルの大型RCグライダーが発売されています。

 ドイツやアメリカでは普及していますが、日本では適当な場所が限定されます。そこで日本では手軽に楽しむために河川敷の土手を利用した「土手ソアリング」が行われるようになりました。土手ならば比較的場所も見つけやすく、小型の機体を飛行させることができます。

 ただ河川敷の土手は高低差があまりないので、水平方向の風が強くても上昇風(風の垂直方向のベクトル)は弱く、本格的なスロープ機や大型スケール機の飛行には適しません。土手ソアリングにはハンドランチグライダーや2mクラスのサーマルグライダーなど、翼面荷重の小さい機体が適しています。

・5.5mスパンスケールRCグライダーによるスロープソアリング

・ダイナミックソアリング(DS)


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3.サーマル・ソアリングの高度獲得方法

 RCグライダーは、位置エネルギーを速度エネルギーに変換して滑空飛行する模型航空機です。このため、グライダーが平地でサーマル・ソアリングを行うためには、まず高度を獲得しなければなりません。高度を獲得するためには、いくつかの方法があります。

 以下に手軽な順に説明します。

3.1. ハンドランチ

 翼幅1500mm以下、重量300g以下の小型グライダーを発航させる方法として、手で投げ上げる方法があります。うまくサーマルをつかめば、さらに上昇させることも可能ですが、そう容易ではなく、普通は、2〜3旋回して着陸、ということになります。

 1分飛ばすのもむずかしいものですが、うまく低空のサーマルにヒットして3〜4分飛んだときは大きな達成感が得られます。さらに強力なサーマルに乗せることができれば高度200〜300mまで上昇し、10分、20分飛行させることも可能です。

 このタイプのRCグライダーはRC装置の軽量化によって初めて可能になった分野で、かつては助走して投げ槍のように機体を投げる方法が一般的でしたが、現在は翼端を持って円盤投げのように投げ上げる方法(SAL=Side Arm Launch, DLG=Discus Launch Glider)が普及してきました。円盤投げ方式の方が高度が取れ、それほど腕力も必要としないからです。

長 所:

 機体が小さく、特別の道具類がいらないので、ランニングコストがほとんどかからずにRCグライダーを楽しめます。機体が小型・軽量なため操縦ミスで墜落させてもダメージが少なく、修理も容易です。

短 所:

 高度を取るのがむずかしく、サーマルに乗せることがむずかしいので初心者にはあまりお薦めできません。軽くて剛性の高い高性能機はそこそこの価格となります。初心者の場合は小型軽量の電動グライダーから入門した方がよいでしょう。
 また機体が小型軽量なために風に弱くなりますので、風が強く吹く季節/地域にはお薦めできません。

・競技用ハンドランチ機シュタイクアイゼン

3.2. ハイスタート(ショックコード)曳航

 10〜30mのゴム索(サジカル・チューブ)に、100〜150mの曳航索(ナイロン・テグス)をつなぎ、60〜100m伸ばし、ゴムの収縮する力を利用してグライダーを上昇させます。最近は電動グライダーが普及してきたため、ほとんど見かけなくなりました。

長 所:

 ゴムを人力で引っ張るので、安価で健康的です。よい運動にもなります。軽量(1.7kg以下)、軽翼面荷重(25g/dm2以下)で翼幅1.8〜2.5 mの機体に適しており、慣れればひとりで索を引き伸ばして発航することができます。

短 所:


 重量のある機体、翼面荷重の高い機体は曳航できません。翼幅は3mが限度です。「大型グライダー用」いう強力なゴムもありますが、引っ張るのが大変で限界があります。索を伸ばすために、風の方向に200〜300mのスペースが必要です。また適度な向かい風が必要で、無風時や微風時には、あまり高度が取れません。

 なお、3.1.のハンドランチ・グイライダーの場合は、条件がよければゴム10m、テグス30〜50m程度の短いハイスタートで曳航してサーマルに乗せることが可能です。

・バンジーランチ
 ハイスタート曳航の変種として、「バンジーランチ」(Bungee Launch)があります。これは強いゴムを使ってスタート直後に高速で水平飛行させ、索から離脱後、急角度で上昇させて速度エネルギーを高度に変換する方式です。

 初期の速度はかなり速くなるため機体にかかるストレスが大きくなりますので、機体は丈夫でなければなりません。特に主翼の剛性が不足すると高速飛行時にフラッター(はばたき運動)を起こして空中分解を起こしますので注意が必要です。このため、バンジーランチ用の機体はグラス、カーボン、ケブラーをエポキシ樹脂で固めたコンポジット機が一般的です。

※上述のハイスタートのことをバンジーと呼ぶこともあります。


3.3. 手曳き(ハンドトウ)

 模型グライダーの曳航方法としては古くからある方法で、100〜150mの曳航索(ナイロン・テグス)を持ってタコ揚げのように走って曳航します。また、索の端を地面に杭で固定し、折り返し滑車(リターン・プーリー)に索を通して滑車を持って走ると曳航索のスピードが倍になり、無風時にも曳航が容易になります。

長 所:

 人力ですのでシンプルで環境にもやさしく経済的。曳き手の運動量はかなりのものですので健康増進効果も期待できます。

 曳航するときの手応えは凧揚げの手応えに似ていて風を感じることができます。曳航時の走り方にはコツがあり、スポーツとして楽しめます。

短 所:

 曳き手が必要なのでひとりでは飛行できません。また無風時には全力で走る必要があるため体力も必要です。夏場は体力の消耗が激しくなるので曳き手はちょっとつらいです。最小でも風向きにそって長さ200m程度のスペースが必要です。


3.4. 電動RCグライダー

 グライダーに電動モーター、バッテリー、スピードコントローラーを搭載し、電動モーターに取りつけたプロペラを回転させて前進エネルギーを得て上昇させる方法。これはあくまで高度獲得の手段なので、一定高度に到達した後はモーターを停止させ、滑空飛行に入ります。このとき抵抗が少なくなるようにプロペラは折りたたむのが一般的です。

長 所:

 発航は手投げでできますので、着陸スペースさえあれば、比較的狭い場所からでも発航できます。適切なモーターとバッテリーを組み合わせれば、およそ重量4kg までの機体を一人で手投げ発航できます。

 最近のモーターとバッテリーは充分なパワーがありますので、サーマルに乗せやすい高度100〜150mぐらいまで上昇させることができ、またモーターを再始動して再上昇できますから、飛行時間は容易に20〜30分となります。

 純グライダーよりも重量は重くなりますが、そのぶん速度が速くなるため、3〜4m/sの風でも飛行可能です。慣れればおよそ10m/sの風まで飛ばすことができます。


短 所:

 モーター、バッテリー(最低でも2〜3本)、スピード・コントローラー、充電器、と初期費用が結構な額になります。モーターと電池を積むため、同サイズの純グライダーよりも飛行重量が大きくなり、滑空速度は速くなります。

 このため、弱いサーマルに乗せるのはむずかしくなります。また、重量物を搭載しているので、荒い着陸や墜落時の胴体や翼の破損被害も大きくなります。


 動力用バッテリーはメンテナンスが必要で、よいコンディションを維持するには手間と時間がかかります。特にリチウム・ポリマーバッテリーは軽量で高容量ですが、過充電、過放電に弱いなどデリケートな面があり、取り扱いとメンテナンスには慎重さと注意深さが必要です。

 なお電動モーターとはいえ20A以上流して回すときのパワーは強力で非常に危険です。モーターは電気が流れればすぐに回転するので飛行の前後には不用意にモーターが回らないように充分な配慮が必要です。

 以前は049〜09クラスの小型内燃エンジン(グロー・エンジン)を搭載するタイプもあり、これも「モーターグライダー」と呼ばれていましたが、現在ではほとんど見かけなくなりました。

電動RCグライダーのフライトムービー

3.5. ウインチ曳航

 電動モーターあるいはエンジンを動力として、200〜400メートルの曳航索(ナイロン・テグス)をドラムに巻き取りグライダーを上昇させます。RCグライダーでは折返しプーリーを利用するのが一般的。

長 所:

 パワーのあるウインチを使用すれば、重量3〜4kgの大きな模型も曳航させることができます。F3B競技ではウインチ曳航により、300m以上の高度を獲得するようになってきています。

短 所:

 ウインチおよびバッテリーの運搬と設置に手間がかかります。曳航索を展張するためには、最低でも200mの平坦で草が伸びていない地面が風の方向に必要です。

 ひとりで発航するのはむずかしく、また索の回収もしなければならないので、2人以上のチームを組むことが必要です。

3.6. 飛行機曳航(エアロ・トーイグ)

 エンジン付きのラジコン飛行機で曳航する方法。大型スケールグライダーには最適ですが、滑走路が必要なこと、曳航機とグライダーの双方のパイロットに技術が必要なことなど、機材と技術の両面から簡単ではないため、日本ではあまり普及はしていません。RC飛行機(エンジン機)のクラブでグライダーを楽しむ場合には適しています。

 この変形としてエンジンRC機の上面にグライダーを載せ、複葉機状態で離陸させて上空で分離させる、という第2次大戦時のドイツのミステルのような方式もあります。ハンドランチ・グライダーやスパン2m以下の小型軽量グライダーですと、20クラススポーツ機に載せて楽しめるでしょう。

3.7. その他の高度獲得方法

 この他、固体燃料ロケットで打ち上げる方法、ヘリウムガスの軽気球で吊り上げる方法、凧で吊り上げる方法、RCヘリコプターで吊り上げる方法、ラジコン・バギーにテグスを取り付け、走らせて曳航する方法などが試みられていますが、いずれも一般的ではありません。

3.8. 高度獲得方法のまとめ

 環境にやさしく、またグライダーの原点といえるのはハンドランチ、ハイスタート、手曳きです。いずれも人力によって高度を獲得するので、省エネ・省資源です。比較的安価にRCグライダーを楽しめると同時に運動効果もあります。

 電動、ウインチ曳航、飛行機曳航はバッテリーやエンジンを使用しますので、ややエネルギー消費が大きくなります。機材の費用も高くなります。またウインチや飛行機曳航の場合は機材の運搬も大がかりになります。

 手軽さ、費用対効果などを総合すると、現在、一般的なのはハンドランチと電動グライダーです。

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4.RCグライダーを始める

4.1. ハンドランチ・グライダー

4.1.1. 製 作

 まずは翼幅1~1.5m程度のハンドランチ・グライダーから始めることをお薦めします。工作が嫌いでなければ、組み立てキットから組み立てるのもよいでしょう。このクラスの機体なら製作スペースも狭くてすみます。自分で機体を組むことにより、後々、機体を壊したときの修理もできるようになります。

 製作の注意点としては、左右が対称になるように配慮することです。特に主翼は可能な限り左右同じ大きさ、同じ角度になるようにします。特にグライダーは主翼が左右方向に長くなりますので、ねじれないように作ることが必要です。多少のねじれは、フィルムを貼るときに調整できますが、製作時にねじれないようにするのが原則です。

 また、主翼と尾翼の位置関係も、前後左右から見て適切に取り付けられている必要があります。たとえば水平尾翼が主翼に対して正しい角度で付いていないと、直進しなくなりします。

4.1.2. 調 整

 RCグライダーはただキットを作るだけ、RC装置を積むだけでは飛行しません。完成機の場合も調整が必要です。もっとも重要なのは重心位置です。キットの説明書にしたがって正確に重心位置を調整します。

 小型になればなるほど、ほんのわずかな重心位置のズレが飛行特性に影響しますので、指で翼下面を支えるだけでは不十分で、ヒノキ棒などで重心を支える簡単な器具を作るか、重心位置の主翼中央に穴をあけ、糸で吊り下げることをお薦めします。糸で吊る方法は、飛行場所でも重心の確認ができますのでお薦めです。

 ほとんどの場合、機首が軽くなりますから、釣具店で売っている薄い板鉛を機首に積んで調整します。

 ラダーやエレベーターの舵角(動作角)についてはキットの指示にしたがってください。

関連トピック:7.2.重心

4.1.3. 飛 行

 すでにエンジン機などのラジコン飛行機を飛ばすことができる場合は問題はないですが、

 初心者の単独飛行は無理です。必ず壊します。RCグライダーの経験者/ベテランの指導の元に飛ばすようにしてください。

 ただ、どうしても単独で飛ばさなければならない場合は、以下のようにしてみてください。機体を壊す前に単独飛行のむずかしさが体験でき、指導者の必要を実感されることと思います。

 風が弱い日を選び、じゅうぶんに広い場所でテスト飛行をします。RCグライダーは基本的に車輪(ランディング・ギア)を持たず、胴体着陸になりますから、舗装された地面や小石・砂利の多い地面は適しません。芝生、牧草地、あまり草が伸びていない河川敷などが適しています。

 まず送受信機をオンにし、サーボが動作することを確認してから、グライダーを風に正対してやや下向きに軽く投げます。なめらかにまっずぐ滑空すればOKです。しかし機体が正しく作られていて、重心位置が適切であっても、エレベーターやラダーの位置のわずかなズレによっては直進しないことがあります。

 特にエレベーターのニュートラルは初心者にはわかりにくいものです。その場合は、エレベータートリムを調整します。手投げ後、機首を下げて突っ込む場合は数コマアップに、手投げ直後、いったん機首を上げてからガクッと突っ込む場合は数コマダウンにします。

 手投げ後、左右どちらかの方向に傾いて飛行する場合はラダートリムで調整します。

 しかし、これらの調整は言葉で読んでもなかなか実際にはうまくできないものです。やはり経験者の指導を受けることが必要です。

 初心者がひとりで飛ばすと、まず99%、操縦ミスで機体を壊してしまいます。場合によっては紛失してしまうこともあります。そして精神的に大きなショックを受け、RCグライダーを断念してしまうことにもなりかねません。スキーや水泳を独学で習得する人がいないのと同じです。必ず経験者と一緒に飛ばすようにしてください。

関連トピック:7.1.対面操作

4.2. 次のステップ

 ハンドランチグライダーを何機か飛ばし、サーマルに乗せて10分ほどの飛行を体験されたら、より高性能のハンドランチグライダーや電動RCグライダーに進むとよいでしょう。

 翼幅2m〜3mの機体は、性能的には1.5mのハンドランチよりもはるかによくなります。

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5.電動RCグライダー

5.1. 手軽にソアリング

 筆者は、最初ハイスタートでRCグライダーを始めました。そして電動グライダーが普及し始めても、ハイスタート曳航にこだわっていました。特に初期の電動モーターは効率が低く重量ばかりかさみ、満足に飛ばなかったため、あまり魅力は感じませんでした。

 しかしモーターの進歩、ニッカドバッテリーやリポバッテリーの進歩、そして充電方法の進歩によって電動グライダーの性能がどんどん向上し、やがて電動グライダーはハイスタート曳航やウィンチ曳航では到達できない300m以上の高度に簡単に到達できるまでになりました。

 この高度になるとサーマルも大きく、飛行時間は条件があまりよくなくても10〜15分、条件がよければ20分、30分飛ばすこともしばしばになってきました。

 モーターやバッテリーによる重量増加による翼面荷重の増加は、獲得高度の高さを思えばまったく問題にならず、かえって飛行速度が増大するため、多少の風でも問題なく飛ばせる結果となり、飛行可能な条件の幅を広げることになりました。

 電動グライダーはグライダー操縦の入門にも適しています。経験者の指導のもとに電動RCグライダーで練習すれば、高い高度で練習できるので、舵の打ち間違いをしてもリカバリーでき、また1回の飛行時間が長いために練習の能率が上がり、サーマルの見つけ方も容易にマスターできます。この点ではRCグライダー初心者の練習用にも適しています。

 なお電動RCグライダーは、ほとんどの場合エンジンRC機用の飛行場でも飛行可能ですから、すでにエンジンRC機の操縦をマスターされている方がサーマルソアリングを楽しまれる場合にも適しています。

ただし、

 初心者が初めて電動RCグライダーを飛ばす場合は、必ず経験者/ベテランの指導の元に飛行するようにしてください。

 「初心者でも飛ばせます」と謳っているキットでも初心者の単独飛行はまず無理です。ほとんどの場合、墜落させ壊してしまうでしょう。

 電動RCグライダーにはバッテリーの充電方法、コントローラーの設定、プロペラの選定など、いくつかの技術的なノウハウがあります。これらのひとつでもミスがあると、急にプロペラが回ってケガをしたり、パワーが足りなくて上昇しなかったり、と思わぬトラブルが起こります。これらのトラブルを避ける意味からも、必ず経験者の助言・指導を受ける必要があります。

5.2. 代表的なカテゴリー

 以下にモーター/バッテリーのサイズによる代表的なカテゴリーについて説明します。

※例として挙げている機体は、今となってはやや古いものですが、おおよその目安になると思いますので、残しておきます。

(1) 1.5mクラス

 比較的軽量のアウトランナーブラシレスモーターと、リポ2〜3セル700〜1200を用いた電動グライダー。入門用にお薦めできます。翼幅は1.5m〜1.8m前後、飛行重量は500〜800gが一般的です。

入門向き。

【機体例】
タンゴ

(2) 2mクラス

 アウトランナーブラシレスモーターにリポ3セル1800〜2000mAhを組み合わせるクラス。翼幅はだいたい1.8 m〜2.5 mです。

 1.5mクラスよりもひとまわり大きく重くなるため、滑空速度が速くなり、滑空性能はよくなります。また風にも強くなります。反面、速度が速くなるため、安全面から初心者は必ず経験者の指導の元に飛ばす必要があります。

入門〜中級者向き。

【機体例】サイレントドリーム2.5

(3) 2.5〜3mクラス

 アウトランナーブラシレスモーターとリポ3000〜4000mAhの3〜4セルバッテリーと適切なモーター/アンプを搭載すれば、翼幅3m程度の軽量RCグライダーを電動化できます。大きな機体は空気力学的な効率が高くなるため滑空性能がよくなり、サーマルで高く上昇させても視認できるので、飛行領域が広がります。

 また同じ速度で飛行していても、大きいほど見かけ上ゆっくり飛んでいるように感じられ、風にも強くなります。中級者向きです。

 さらに適切なモーターとバッテリーを組み合わせれば翼幅 3.5〜4 mのスケール・グライダーも楽に上昇します

中級者向き。

【機体例】
インパルス-E 、イオンXL

(4) 2mホットライナー

 翼幅1.8〜2mの高速タイプの電動グライダーで、中〜上級者向きです。のんびりした滑空飛行だけでなく、ロール(横転)やループ(宙返り)などの曲技や高速飛行を楽しむことができます。

上級者向き。

【機体例】
チリオーラ3

・関連ページ:バッテリーのノウハウ

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6.RC装置

 RCグライダーの操縦には以下の装置を用います。

6.1. 送信機(transmitter, TX)

 操縦者が操作するもので、現在は2本のスティック(操縦桿)を持つタイプが一般的です。日本では右スティックの左右の動きでエルロン(補助翼)を、上下でエア・ブレーキ(スポイラーなど)を操作し、左スティックの上下でエレベーター(昇降舵)、左右でラダー(方向舵)を操作する方式(モードI)が主流です。なおRCグライダーには主翼に強い上半角を付けてエルロンを省略するものもあります。この場合は右スティックの左右の動きでラダーを操作します。

 初めての方が間違いやすいのがエレベーターのアップ/ダウンです。左スティックを下げて(引いて)アップ、上げて(押して)ダウンです。これは実物の飛行機の操縦桿の動きに対応しています。なお、その他の機能たとえば電動モーター・グライダーのモーターのオンオフなどは送信機に装備されているスイッチ類を使います。

【RCグライダーの操縦方式

 エルロン、エレベーター、ラダーの3舵の機能はRCエンジン機と同じです。ただし以下のようなグライダー特有の設定を行います。

・エルロン・デファレンシャル(差動)

 縦横比が大きいRCグライダーではエルロンを切ったときにアドバース・ヨーという現象が起こります。これはエルロンが下がった側の主翼の抵抗が増大することに起因します。たとえば右にエルロンを切ったとき、ロール軸方向では右バンクに入ろうとしますが、左翼の抵抗が増加し、その結果機体が左に向こうとするヨー軸方向の動きを起こします。このアドバース・ヨーを回避するために、エルロンは上げを大きく、下げを小さくします。これが差動です。この比率は2:1〜3:1に設定しますが、最適比率は機体によって異なります。電動グライダーでラダーを装備していない機体の場合は特にこのデファレンシャルを適切に設定する必要があります。なお、ハンドランチ機の場合上げを小さく、下げを大きくするリバース・デファレンシャルの設定をすることがあります。

・エルロン→ラダーミキシング

 縦横比が大きい機体の場合、上述のアドバース・ヨーを打ち消してなめらかに旋回させるためにはエルロン操作だけでは不十分で、ラダーを当てる必要があります。現在のコンピュータープロポには「エルロン→ラダーミキシング」機能があり、これを使ってエルロンにラダーを連動させると(ラダーの個別操作をしなくても)きれいに旋回させることができます。

・スポイラー/スポイロン

 故意に翼上面の気流を乱して揚力を減少させ、沈下率を大きくするのがスポイラーです。スポイラーは主に2つの目的で使われます。まずRCグライダーは滑空比がよいため着陸時になかなか高度が下がらず、飛行場所が狭いと着陸がむずかしくなります。こういう場合には、着陸進入時に高めに持ってきて、着陸直前にスポイラーを出して降下させます。 

 またサーマルに入って上昇し、見失いそうになったときにもスポイラーを出して降下させます。200〜300m上がったRCグライダーはゆっくり飛んでいるように見えるため、スポイラーを出さずに降下させると機速が過大となり、主翼がフラッター(羽ばたき現象)を起こして壊れることがあります。

 スポイラーは主翼上面に装備され、板状の抵抗板が立ち上がるようになっていますが、最近はエルロンを同時に上に跳ね上げスポイラーの代用として使うことも多くなっています。これをスポイロンと呼びます。

 通常、スロットル・スティックを下げることでスポイラー/スポイロンを動作させます。これは、まだコンピュータプロポが登場する以前に、4チャンネルの送信機を使ってグライダーを飛ばしていたときのチャンネル割り当てに由来します。グライダーでは、エルロン、エレベーター、ラダーのスティック操作はエンジン飛行機と同じですが、スロットル(エンコン)は使いません。このため、スポイラーをスロットル・チャンネルに割り当てたのです。また、上空飛行時、巡航時はスティック位置をフルハイとし、スティックを下げることでスポイラーを動作させ、着陸させました。これが現在まで受け継がれています(パイロットによってはスポイラーを予備チャンネルのスイッチやスライダーに割り当てることも行われています)。

 ハンドランチグライダーなどのフルエルロンの機体の場合、エルロンを跳ね上げるスポイロンはブレーキとして沈下率を増大させる効果は後述のフラッペロン下げと同じですが、フラッペロン下げの場合には減速されるのに対して、スポイロンの場合は速度は低下しません。このため、強風時あるいはスロープでのフライトではスポイロンの方が着陸しやすいことがあります。


・フラップ/フラッペロン

 RCグライダーのフラップは翼のカンバーを変化させるため、またブレーキとして後述のバタフライ動作のために用います。

 フラップを数ミリ下げる(ポジティブ・フラップ)とカンバーが増加し、揚力が増大するために飛行速度が遅くなります(抵抗も増大します)。逆にフラップを数ミリ上げる(ネガティブ・フラップ)とカンバーがS字状となり、抵抗が減って速度を出すことができます。

 サーマル・ソアリング時には、サーマルに入って旋回しているときはフラップを下げ、サーマルから脱出して次のサーマルを探すときにはフラップ・ニュートラルあるいはフラップを上げて速度を出します。

 また最近のコンピュータープロポではフラップからエルロンにミキシングをかけることにより、エルロンをフラップ動作させることも可能です(フラップ→エルロンミキシング。翼全長にわたってカンバーを変化させることになります)。

 逆に運動性を高めるためにフラップをエルロン動作させることも行われます(エルロン→フラップミキシング)。このようなエルロンとフラップの連携動作を「クワドラ・フラップ」と呼ぶこともあります。

 ハンドランチグライダーなどのフルエルロンの機体の場合、エルロンを下げるフラッペロンはブレーキとして沈下率を増大させる効果は上述のスポイロンと同じですが、フラッペロン下げの場合には減速されますので、無風〜弱風時には着陸が楽になり、またハンドキャッチも容易となります。

・バタフライ(クロウ

 機能としてはスポイラーに相当します。エルロンとフラップを装備した機体では、エルロンを跳ね上げ、フラップを大きく(60度〜90度)下げます。これにより機体は大きく沈下します。これを「バタフライ」あるいは「クロウ」と呼びます。スポイラーと同じく着陸時の高度処理とサーマルから脱出するときの高度処理に用います。スポイラー/スポイロンと同様、スロットルスティックで操作します。

6.2. 受信機(receiver, RX)

 送信機からの電波を受信するもので、40MHz、72MHzの場合は長さ1メートルほどのリード線のアンテナが、また2.4GHzの場合は10〜15cmのアンテナが1〜2付いています。受信機は次に述べるサーボやスピードコントローラーに信号を送る働きをします。

6.3. サーボ(servo)

 エルロンやエレベーターなどの舵面を動かすためのもので、小さなモーターとギアの組み合わせによって軸を任意の角度に回転させます。

マイクロ・サーボとサブマイクロ・サーボ
servos
JR NES-341サーボ(黒、18 g)とGWS PICO STD(青、5.4g)。

6.4. 受信機用電源(receiver battery)

 受信機 およびサーボを動作させるためには電源が必要です。現在ではニッケル水素電池が一般的です。ハンドランチ・グライダーでは容量100〜300mAhの小型のもの、中型では250〜700mAh、大型でサーボの数が多い場合には1000〜2000mAhのニッカドを用います。いずれの場合も4本直列で1.2V×4=4.8Vが基本です。

 またハンドランチ・グライダーでは3.7V300mAh程度の単セルリポやカメラ用リチウム電池CR2を2本(3V×2=6V)搭載することもあります。

 電動グライダーの場合には、動力用バッテリーから受信機 /サーボ用電源を供給するように作られたアンプ(スピードコントローラー)を用いることもあります。このタイプは「ベックBEC=Battery Eliminator Circuit付き」などと呼ばれます。

・関連ページ:バッテリーのノウハウ


6.5. アンプ(ESC=electric speed controller)

 電動グライダーの場合に必要となります。動力用バッテリー(ニッカド)とモーターの間に接続され、モーターへの電力供給を制御します。正式には電子スピード・コントローラーESC=electric speed controllerですが、慣習的に「アンプ」と呼ばれます。

 ブラシレスモーターの場合は、直流電源を交流に変換してモーターに供給するため、回路的には複雑になり、かつては高価でしたが、最近はだいぶ手頃な価格になってきました。これから始めるなら、ブラシレスモーターとブラシレスアンプの組み合わせをお薦めします。

 なおブラシモーターの場合には単純なオンオフスイッチが使われることもあります。

 またRCグライダーに使用するアンプには電磁ブレーキ機能が必須です。これはモーターの空転を防ぐもので、この機能がないとモーターを停止させてもプロペラが空転して抵抗が大きくなり、滑空性能が悪くなります。一部の飛行機用アンプ、ヘリ用アンプにはブレーキ機能がないものがあり、電動グライダーには向きません。

 電動グライダーではまず最初に高度獲得のためにモーターを回し、一定高度に達した後はモーターを停止して滑空させてサーマルを探し、高度が下がってきたらまたモーターを回して高度を取る、という使い方をします。電動グライダーの場合は最大出力で上昇、停止して滑空させるのが基本です。

 ただ、スパン1m以下の小型電動グライダーは滑空比が悪く、無動力ではすぐに降りてきてしまいます。このタイプの機体では、モーターを中速で回して、水平飛行からごくわずかに降下するようにしてフライトすると、あたかも高揚抗比のグライダーのようにサーマルソアリングを楽しむことができます。この手法は、実物のモーターグライダーでも訓練用に用いられる方法で、いわば高性能グライダーをシミュレートすることに相当します。

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7.ヒント&ティップス

 ここでは筆者の体験をもとにRCソアリングをマスターするための注意点などを書いてみます。どちらかといえば不器用で運動神経のにぶい筆者の体験記ですが、これからRCソアリングを始めようという方のご参考になれば幸いです。

 なお機体製作、調整、保守管理については下記ページをご覧ください。

・製作・調整・保守管理の注意点

7.1. 対面操作と当て舵

●対面操作

 RCグライダーに限らずラジコン全般にいえることですが、入門段階でまず直面するのが対面操作です。つまり機体が自分に向かってくるときに、どちらに舵を切るとどちらに機体が傾くか、ということです。

 機体が自分から出発して前方へ飛んでいくときは、ラダーを右に打てば機体は右に傾き、左に打てば左に傾きます。しかし機体が自分に向かって飛んでくるときにはどうなるでしょうか。ラダーを右に打てば機体は左側に、左に打てば右側に傾きます。これは初心者が直面するもっとも難しい操作といってもよいでしょう。

 この対面操作は高度に余裕がない低空で失敗すると墜落につながり、機体を壊しますので、最初は必ず熟練者の指導のもとに、充分な高度で練習することをお薦めします。

 この対面操作に慣れるためにはいくつかの方法があります。

(1)送信機アンテナを常に進行方向に向ける
 自分に向かって飛んでくるときには身体をねじって操作します。こうすると左右を打ち間違えることがなくなります。慣れてきたら少しずつ送信機を普通に持った状態でも同じように操作できるように練習します。

(2)イメージトレーニング
 送信機を持って飛行しているグライダーを思い浮かべ、舵を打ってみます。これはけっこう役に立ちます。

(3)パソコン・シミュレーター
 自宅で対面操作の練習をしたい場合はパソコン上のRCシミュレーターが有効です。間違って機体を落としても実害がありません。

(4)ラジコン・カー
 筆者がラジコンを始めたころはまだパソコン・シミュレーターがなかったので、ラジコン・カーで練習したことがあります。ただRCグライダーはラジコンカーよりもずっと動きが速いですし、止まることができないので実際にRCグライダーを操縦したときにどこまで有効か、限界はあります。それでも対面操作の練習をまったくしないよりは役に立つでしょう。

●当て舵

 もうひとつ、RCグライダーやRC飛行機特有の操縦方法として当て舵をマスターする必要があります。これは、左右いずれかに傾いた機体をもとにもどすために傾いた方向とは反対にエルロンあるいはラダーを小さく打つことです。

 ラジコンカーであれば、右舵を打った後、スティックを中立にもどせば車は直進にもどります。RCグライダーでも上半角が強い入門用のラダー機は復元力があり、スティックを中立にもどせば機体は水平にもどりますが、ある限界を超えるとこの復元力が働かず、機体は傾いたまま飛行し、次第に巻き込みが大きくなってやがて墜落してしまいます。こうなる前に、ほんのわずか反対の舵を打つことで機体を水平にもどし、直進させなければなりません。

 原則としてRCグライダーは主翼が水平になっているときに直進し、左右の主翼のどちらかが下がっていると直進せずに旋回する、ということを覚えておくとよいでしょう。

 この当て舵の加減は機体の傾きによります。当て舵が大きすぎれば今度は反対側に傾いてしまいます。経験者のアドバイスを受けながらマスターしてください。

 これに関連して、最初のうちは舵は保持(ホールド)しないですぐにもとに戻す、ということも大切です。このために「舵を打つ」という表現を使います。ラダースティックを軽く右に倒し、機体が傾けばあとはラダーを中立にもどします。このときラダーを傾けたまま保持すると機体の傾きはどんどん大きくなり、やがてスパイラル状に降下を始めて収拾がつかなくなります。練習初期にはラダーもエレベーターも最初はチョン、チョンと打つようにすると安全です。旋回半径が大きかったら、チョンチョンを早めに繰り返すと小さい半径で旋回できます。決してスティックを傾けたまま保持してはいけません。特に初心者は舵が大きく荒くなりがちです。ベテランのスティックの動かし方と機体の挙動をよく観察してください。

 「舵を打つ」というのは、ラジコンの歴史に関係があります。現在のRC飛行機、RCグライダーの送信機はスティック式の比例制御(プロポーショナル方式)で、スティックを倒す角度に比例しててサーボが動き、舵が動きます。しかし初期のラジコン装置は比例制御ができず、サーボやエスケープメントが中立か、右か、左かの動作しかしませんでした。この時代に「チョン打ち」というテクニックがありました。たとえば右舵のスイッチを細かく打つと、舵の効きとしては右舵でホールドするよりも弱い効きになり、擬似的に中間の舵角と等価の操作ができたのです。またボタン式スイッチを押すたびにラダーが右→左→中立と変化するシングル方式のシステムもありました。「舵を打つ」という表現はこうした時代の名残りといえます。しかし、舵を打つという操作は、プロポーショナル方式の現在でもひとつの操縦方法として生き続けているのです。

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7.2. エレベーター操作

 無動力で滑空飛行をするRCグライダーでは、エレベーター操作が滑空性能を左右するといっても過言ではありません。常に機体の姿勢に注意し、機首を下げたらアップを引き、機首を上げたらダウンを打ち、なめらかに滑空するようにします。

 機体が高く上がって飛んでいるときは姿勢がわかりにくくなりますが、この場合は機速で判断します。グライダーの場合は、原則として機速がゆっくりになったときは機首上げ、機速が速くなったときは機首下げです。

 ただし向かい風と追い風とでは見かけ上の速度(対地速度)に差が出ますので、一定以上の風が吹いているときは風の影響も考慮して適切な滑空速度(対気速度)を判断する必要があります。

 初心者のエレベーター操作はほとんどの場合、大き過ぎて機体が暴れます。ベテランの操縦を参考にして早め早めに細かく舵を打つことが大切です。

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7.4. 作って飛ばして壊して直してまた飛ばす

 RCグライダーは飛ばすことに意味があります。そして飛ぶものには落ちる危険があります。落ちれば壊れます。また着陸時に操作を誤ると壊れます。壊れると心理的にものすごくガックリくるものです。後悔の念がわき上がります。「あのとき、こうしていたら・・・」。

 こういうとき、事故の分析と反省は必要ですが、あまりクヨクヨするのはやめ、気を取り直して機体を修理しましょう。壊れた機体は最初はとても直りそうもないように見えますが、冷静に観察すればけっこう直せることがわかります。

 無謀な飛行はいけませんが、機体を壊すことを恐れていては飛行できませんし、上達もしません。この意味で「ラジコンは機体を壊さないと上達しない」というのは一面の真理です。

 修理もまた必要最小限、つまり強度的に問題がなく、表面がほぼ平滑で飛行可能であれば十分です。RCグライダーはディスプレイモデルではありません。飛ばしてその飛行を楽しむものです。多少の修理の跡は飛ばしてしまえばまったく見えません。筆者は「2〜3m離れたらわからない修理跡」は気にしないことにしています。

 修理による重量増加も、極端に重くならなければ実際の飛行性能を大幅に下げることはありません。サーマル滞空用の軽量グライダーや軽量電動グライダーの場合は修理による重量増加を心配する方もおられます。確かに重量が増加すると、理論的には静気流中での沈下率は大きくなり、滞空時間が短くなるとはいえますが、風があり、サーマルも発生しているような状況での飛行ではほとんど影響ありません。特にスロープでの着陸は機体を壊しやすく、ある程度の割り切りも必要です。

 修理の際に注意すべきなのは、あまり補強しすぎないこと、適度な強度を持たせる、ということです。ある特定の部分だけ強度が高くなると、今度は強度の弱い部分が壊れます。たとえばバルサ構造の胴体の一部をグラスエポキシで補強したとしましょう。すると、次には補強したグラスエポキシと補強されていないバルサの境目で壊れます。過ぎたるは及ばざるがごとし、です。

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last modified: 2016.08.22



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