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flywith the wind
osamu's RC flight
エッセイ
風を見ながら

1.むずかしいからおもしろい!

 何ごとにつけ簡単にできること、簡単に手に入るものはありがたみがない。苦労して手に入れたものほど価値があるものだ。

 手先不器用、運動神経がにぶく、徒競走では万年ビリの運動ダメ少年だった筆者にとって、RCグライダーの製作や飛行は苦難の道だったし、今でも失敗や苦労の連続。それでもこれまで続けてきたのはなぜだろうか。それはひとつにはRCグライダーが「むずかしいが挑戦しがいのある課題」だったからではないかと思う。英語でいえば「チャレンジングchallenging」だ。

 新しい機体の初飛行のときは今でも足がガクガクし、緊張する。強風の中でのスロープ・ソアリングの着陸は心底怖いと思う。しかし機体が遠くの山並みを背景に大空をすべるように飛行するのを見るときの満足感は何にも代え難い。そして無事、機体を着陸させたときのうれしさもまた格別だ。この達成感は課題が困難なほど、むずかしいほど大きいのではないだろうか。

 初めて秩父の山へスロープ・ソアリングに行ったときのこと。平地でのサーマルソアリングや電動グライダーに少し飽きてRCソアリングから遠ざかっていたとき、Kさんに誘われて初めてスロープ・ソアリングを見た。山頂は狭く、見下ろす谷は深い。周囲には木が茂っている。

south view from sasayama

 まず最初に思ったのは「とてもこんなところでグライダーを飛ばすことなんかできない」ということだった。飛んだとしても、こんな狭いところにどうやって着陸させたらいいんだろう。風が弱くなって機体が浮かなくなったら、あの山林の中に落ちてしまい、とても見つからないだろう…

 しかし1時間ほど、他の人がグライダーを飛ばし、着陸させるのを見ているうちに少しずつ気持ちが変化してきた。「注意して飛ばせばなんとかなるかも…」

lauching

 そして思い切って自分のグライダーを飛ばした。もちろん、ベテランのYさんにそばにいてもらい、アドバイスを受けながら飛ばしたが、「案ずるより生むが易し」で、機体は安定して飛んでくれた。それでもさすがに狭い山頂への着陸は自信がなかったので着陸はYさんにお願いしたが、このスロープ初飛行は大きな達成感を与えてくれた。

 この数年後、2005年にはRCヘリコプターにチャレンジした。それまでは自分にはヘリは無理、と考えていたが、XRB-SRラマという初心者向けの安定した機体が発売されたので、思い切って購入してみた。この機体は非常によくできており、飛ばしやすく、1週間ほどで自宅のリビングの6畳ほどの空間でホバリングができるようになった。

 これに気をよくして次に屋外用の機体に挑戦したが、今度はそう甘くはなかった。無風ならホバリングができるが、風があるとコントロールできない。数回、クラッシュしてしまった。そこで初心にかえってRCフライトシミュレータを入手し、ホバリングトレーニングで基本からやり直すことにした。毎日10分、風を設定して練習した結果、1ヶ月で実物でも安定してホバできるようになり、さらにシミュレータで側面ホバ、対面ホバに進み、3ヶ月ほどで対面ホバもできるようになった。シミュレータ上で、初めて対面ホバを継続してできたときには大きな達成感があった。

 自分にはとてもできそうにない、と思ったことが思い切って踏み出したらちゃんとできた、という、ある種の驚きもある。困難は自分の内面にある。怖じ気づいたり消極的になる気持ちが行動を躊躇させる。自信過剰もいけないが、自信喪失もいけない。自分のできることとできないことを冷静に見極めた上で、基礎から段階を追って地道に努力することだ。とはいえ、時には多少の冒険をするのもよいのではないかと思っている。

 何もしなくても与えられるものや、楽して手に入るものは、どんなに高価なもの、希少価値のあるものであっても、本人にとっての主観的な価値は大したことはないのだろう。どんな小さなもの、ちょっとしたことであっても苦労して手に入れたもの、苦労して成しとげたことの方が、主観的にははるかに大きな価値があるのだ。

04.01.01
last modified: 08.02.06

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